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8/26(日)物理学カフェ「加速器ってなんだろう?」のレポート

8/26(日)に旬のベジカフェバルBest Tableさんで物理学カフェ「加速器ってなんだろう?」を開催しました。今回のサイエンスカフェはボランティアのスタッフさん含め参加者が定員20名近く参加されて盛況だったため、会場が少し手狭になってしまいました。当日参加者の皆さまには窮屈な思いをさせてしまってすみません。
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皆様に今回お出ししたお菓子は向山製作所さんの生キャラメルhttp://www.mukaiyama-ss.co.jp/caramel/index.html、会場のBest Tableさん隣の柏屋さんのフルーツぜりー「UCHIWA」、水ようかんです。https://www.usukawa.co.jp/season/summergift/

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今回は夏休み特別企画という事で、CERN(欧州原子核研究機構)で物理学の研究をしていらっしゃる早野龍五先生に加速器のお話をして頂きました。(カメラの設定のため、写真の画像が暗めのものが少しあります。)
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●なぜILCはニュースなのか?
岩手県は電子・陽電子衝突型加速器であるILC(正式略称はInternational linear Collider【国際リニアコライダー】)誘致に取り組んでいる。固い岩盤がある北上山地に建設する予定。加速器とは電子・陽電子などとても小さい粒子を加速させる装置。ILCの建設計画は約4000~8000億円かかる見込み。

●加速器ってそもそも何?
・電子、陽電子、陽子、中性子、イオンなどを加速しターゲットの物質にぶつける事で新しい元素を作ったり、色々な反応を起こさせる。現在、118番の元素が見つかっているがそれ以上の原子番号の元素は半減期が非常に短く、すぐ崩壊するため観測も難しい。「安定の島」とよばれる半減期が長い新しい元素が見つかるかも?と予測されている。

・昔のブラウン管テレビも実は加速器の一つ。電子銃という加速器を使用している。真空のブラウン管内で電子を加速させ、画面の内側にある塗布した蛍光物質に当たると発光するようになる。(電子を正確に任意の位置までまっすぐ飛ばす必要があるため途中で偏向コイルの磁界を使って、軌道を調整します)その光を走査線により全体的にチェックする事で、テレビ画面に映し出される。
・ブラウン管テレビの電圧は約1万ボルト(V)。乾電池の電圧は1Vでその約1万倍になる。物理学では1Vよりも1ev(エレクトロンボルト)の単位を使う。1万ボルトは10kev(K【キロ】=1000)
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・カミオカンデ(岐阜県神岡鉱山地下深くにあるニュートリノ観測装置)による宇宙ニュートリノの検出で、小柴昌俊氏は2002年にノーベル物理学賞を受賞。その後継機であるスーパーカミオカンデ(同じく神岡鉱山地下深くにある宇宙線などの観測装置)の観測と陽子加速器を用いた実験により、「ニュートリノが質量をもつことを示すニュートリノ振動の発見」の研究で、梶田隆章氏は2015年にノーベル物理学賞を受賞した。ニュートリノは3種類ある事も発見された。

※ニュートリノ‥物質を構成している原子、その原子核を構成している素粒子の一つ。質量が非常に小さく、他の粒子と作用することもほぼ無いためこれまで検出や観測が非常に難しかった。

●リビングストン図→1930年代から様々な加速器の開発、向上によって粒子を加速するエネルギーも指数関数的(1万倍~10万倍)に増加していった。
(リビングストン図については高エネルギー加速器研究機構のこちらもご覧下さい:https://www2.kek.jp/ja/newskek/2003/novdec/kasokuki.html
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●加速器以前の重要な発見→宇宙線、陽電子、中間子の発見(3つの発見はノーベル物理学賞受賞につながった)
・宇宙線‥地球の外から降り注ぐ高いエネルギーの粒子(大部分が陽子)、放射線。なぜ高いエネルギーを持って宇宙から飛んでくるのかその理由はまだよく分かっていない。地球の大気中にある窒素などにぶつかり、素粒子であるミュー粒子といった二次的な放射線を出す。
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●ヴィクター・フランツ・ヘス‥1912年、放射線の研究をしていたヘスは線量計を持って気球に乗り、上空の高度に行くほど放射線が強くなる事から宇宙起源の放射線(宇宙線)を発見した。1936年に宇宙線発見の功績でノーベル物理学賞を受賞した。
気球での実験

●カール・ディヴィッド・アンダーソン‥放射線、電気を帯びた粒子(荷電粒子)の軌跡を見る霧箱と電磁石を使用した実験により、1932年に陽電子を発見した。(陽電子:電子と逆の電荷を持つ同質量の粒子、他の電子とすぐ反応し消滅する際にガンマ線を出す)ガンマ線を防ぐ鉛の板を使用する事で、霧箱内の陽電子の軌跡を見出した。1936年に陽電子発見の功績でノーベル物理学賞を受賞した。

●湯川秀樹‥1949年に中間子の存在を理論的に予測、他研究者の発見によりノーベル物理学賞を受賞した。(中間子:原子核内の陽子と中間子の間を相互に強く結びつける働きを持つ素粒子、原子核をまとめる別の力)

●1950年頃の自然観
当時の物理学では上記の科学者の発見により
・原子核を形作る陽子(p)、中性子(n)
・マイナスの電荷を持つ電子とプラスの陽電子(e)
・ミュー粒子(μ)、ニュートリノ(v)
・ガンマ線(γ、原子核から出る短い波長の電磁波)、中間子(π)

が認知されるようになった。

●特殊相対性理論‥アインシュタインが作り出した物理学の理論。一般相対性理論と特殊相対性理論の二つに大別される。
昔の科学者が作り出したガリレオ・ガリレイの相対論、ニュートン力学の理論では時間はどんな場所であっても粛々と進んでいく‥。特殊相対性理論では光の速さは一定のものだが(光速不変の原理)、外の観測者から見ると光速に近い速さで動く物体ほど時間は遅く流れる。以前の物理学の理論では光が進む時間や距離を絶対的なものとして捉えていたが、特殊相対性理論以降では距離、時間が人によって見え方が分かれる、それぞれ相対的なものとして捉えられるようになった。
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・E(エネルギー)=mc^2(質量×光速度の2乗)
上記の計算式では、物体の質量はエネルギーに変換される。エネルギーは物体の運動に伴う運動エネルギーと物体の位置によって決まる位置エネルギーに分類されるがそれとは別に、アインシュタインは新しい時間・空間の座標の変換式であるローレンツ変換を用いて質量が存在することにより生じるエネルギー(静止エネルギー)を発見した。

●コッククロフトとウォルトン
物理学者のジョン・コッククロフトとアーネスト・ウォルトンは共に作成した高電圧発生装置を電源として組み込み、加速器を製作した。100kV(100万ボルト)の電圧まで作れる。この高電圧発生装置は別名コッククロフト・ウォルトン回路と呼ばれ、一瞬の高電圧が必要になるフラッシュ付の写ルンです(使い捨てカメラ)やガイガーカウンターにも搭載されている。1951年に「人工的に加速した原子核粒子による原子核変換についての先駆的研究 」によりノーベル物理学賞を受賞した。

実際に装置で実験した時の写真です、この装置では電圧を高くすると雷が起きてしまうため、粒子の加速は3Mev(=3×10^9ev)が限界だったそうです。
コックフロフトの実験

この加速器で二人は陽子の加速実験を行い、リチウムに陽子をぶつけることでBe【ベリリウム】とHe【ヘリウム】(アルファ粒子)を作成し、人工的に元素を別の元素に変換させる原子核の変換に成功した。この実験はE=mc^2の式の再証実験に使用され、ヘリウム原子核と合計4個分の陽子の質量に差がある事を発見した。ヘリウムは原子核内の結合エネルギーのため合計4個分の陽子の質量と比較してかなり小さく、質量欠損という差が生じている。
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●ローレンスのサイクロトロン
アーネスト・ローレンスが考案した円形の加速器をサイクロトロンという。当時の他の加速器では装置自体が長くなり設置が困難になるため、小型化したものが考案された。電磁石が作る磁場中で粒子を運動させ、加速させる。相対論的な限界のため粒子の加速度やエネルギーに限度がある事から、イオン(プラスまたはマイナスの電荷を帯びた原子)の加速に主に使われている。1939年に「サイクロトロンの発明・開発および人工放射性元素の研究 」によりノーベル物理学賞を受賞した。

●シンクトロン
サイクロトンとは異なる円形加速器の一種。多数の偏向電磁石と電極に相当する高周波加速空洞を使用して磁場と電場の周波数を調整、円形軌道を周回させることで粒子を加速させる。他の加速器と組み合わせて使用する。電子を加速させる際に失うエネルギー(放射光:粒子が磁場中で曲げられるときに発生する電磁波)が膨大なため、加速器の半径もそれに伴い大きくなる。

こちらはシンクロトンの写真です。コンクリートなどが巨大なのは稼働中の加速器から発生する放射線を防ぐためだそうです。
シンクロトン内部風景


カリフォルニア大学バークレー校のべバトロン(陽子の加速に主に用いられるシンクロトロン)を用いた実験により、エミリオ・セグレとオーウェン・チェンバレンは反陽子(陽子と逆の電荷を持つ粒子)を発見した。「反陽子の発見」により1959年にノーベル物理学賞を受賞した。

●1950年代、シンクトロンの実験により新しい粒子、素粒子が多く発見されたがその発見からどうやって統一した理論にまとめるか当時の物理学者は頭を悩ませていた。マレー・ゲルマンにより、素粒子のグループを「クォーク」と名付ける仮説、クォーク仮設が提唱され、1969年に「素粒子の分類と相互作用に関する発見と研究」によりノーベル物理学賞を受賞した。

●主に電子を加速する加速器も開発された。電子の加速は軌道を曲げるとスピードを失うため、直線加速器(線形加速器)が製造された。この線形加速器を使用した実験により、原子核の大きさを調べる事が可能になった。この実験から1961年にロバート・ホフスタッターは「線形加速器による高エネルギー電子散乱の研究と核子の構造に関する発見」と、ルドルフ・メスバウアーは「ガンマ線の共鳴吸収についての研究およびそれに関連する効果の発見」 によりノーベル物理学賞を受賞した。

※核子‥原子核を構成する陽子と中性子の総称。

また1990年には、線形加速器の実験、研究によりクォークの存在の実験的証拠が発見され、リチャード・E・テイラー、ジェローム・アイザック・フリードマン、ヘンリー・ケンドールの3人は「素粒子物理学におけるクォーク模型の展開に決定的な重要性を持った、陽子および束縛中性子標的による電子の深部非弾性散乱に関する先駆的研究」によりノーベル物理学賞を受賞した。

上記の研究をしたSLAC国立加速器研究所(アメリカのカリフォルニア州メンローパークにあります)の線形加速器は、全長約4kmあるそうです。
線形加速器の全景


●より小さいものや、物質の構造を詳しく調べるために高いエネルギーの粒子が必要になった事で、それぞれ二つの粒子をぶつける衝突型加速器が考案、製造されるようになった。電子・陽電子衝突型加速器が発展するようになり、その研究でバートン・リヒターとサミュエル・ティンはチャーム・クォークという新しい素粒子を発見し、1976年には「新種の重い素粒子の発見についての先駆的研究」でノーベル物理学賞を受賞した。

・また、筑波にあるKEK(高エネルギー加速器研究機構)におけるKEKB加速器(電子のビームと陽電子のビームを衝突させる形式の加速器)群とSLAC国立加速器研究所の実験結果の検証により、小林・益川理論の正しさが証明され、2008年には小林誠氏と益川敏英氏は「クォークが自然界に少なくとも三世代以上ある事を予言する、CP対称性の破れの起源の発見」でノーベル物理学賞を受賞した。

※CP対称性‥粒子と反粒子の入れ替えと鏡像反転という操作で、物理法則が変わらない事を言う。1964年にアメリカで行われたK中間子の崩壊の測定でこの対称性が破れている事が分かったが、その破れがどのようにして起こるのかは長年の間、未知のままだった。

・衝突型加速器の発展は陽子・反陽子衝突型加速器の開発、製作につながり、W粒子とZ粒子(W粒子の反粒子)という新しい素粒子の発見につながった。1984年にカルロ・ルビアとシモン・ファンデルメールは「弱い相互作用を媒介する場であるW粒子およびZ粒子の発見を導いた巨大プロジェクトへの決定的貢献」でノーベル物理学賞を受賞した。


・CERNではLEP(電子・陽電子衝突型加速器)を地下に建設して高エネルギーの物理実験、研究をしていたが、現在は終了している。LEP自体は円周27kmの巨大な円形の加速器。以前はZ粒子の研究や素粒子の世代構造(素粒子の種類ごとに3世代に分かれている)の実証実験に使用されていた。この実験でニュートリノの種類は3世代しかない事が確認された。
LHC、LEP概要IMG_1243.jpg
 

●LHC(大型ハドロン衝突型加速器) 
※ハドロン:陽子、中性子など強い相互作用で結びついた複合粒子のグループ
現在、LEPの地下トンネルは陽子・陽子衝突のための加速器であるLHCを新たに設置して建設された。この加速器は超電導磁石で陽子を曲げて加速できる。
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LHCでのプロジェクトはヒッグス粒子の発見と素粒子の標準模型検証につながった。ヒッグス粒子は粒子に質量を与える粒子。2013年に、ピーター・ヒッグスとフランソワ・アングレールは「欧州原子核研究機構によって存在が確認された素粒子(ヒッグス粒子)に基づく、質量の起源を説明するメカニズムの理論的発見」によりノーベル物理学賞を受賞した。
素粒子世代構造

●ILC(国際リニアコライダー)
初期はJLC(Japan Linear Collider)という名称だったが、他各国からの物理学者の参加により現在の名称になった。日本中の断層調査によってILCの建設場所は岩手県に確定した。ILCでの実験ではおそらく新種の素粒子は見つからないだろう、上記のヒッグス粒子の精密な調査などをする予定。ノーベル賞受賞クラスの発見は難しい。

●その他の加速器の話題
・医学利用‥レントゲン、CTスキャンなどX線発生装置は加速器と原理が似ている。
・同位元素の生成‥同じ原子番号で中性子の数が違う元素が生成できる。
・放射光施設‥化学分析などで使用される。
・がん治療‥電子の線形加速器で使われる。日本では放射線医学総合研究所(放医研)のシンクロトロンが最初に使用された。現在では値段が100億クラスする陽子の加速器が普及し始め、がんの放射線治療は保険医療の対象になった。陽子線などのブラッグピークという性質を利用して、がん腫瘍の箇所にエネルギーを集中的に当てるようにしている。
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・超重元素(原子番号がウランよりも大きい重い元素)‥理化学研究所では亜鉛にビスマスを衝突させることで原子番号113の元素ニホニウムを製造した。
ニホニウム生成

早野先生のお話を終えた後は、参加者の皆さんに小テストを行いました。結構難しい問題もあったので、苦戦する方が多い模様でした。物理学カフェ終了の方にはそれぞれ、合格証書の方もお渡ししました。

後ほどの懇親会では、同会場で郡山地元の野菜を使用したお料理を堪能しました。
KIMG0169(物理学カフェ懇親会②)KIMG0168(物理学カフェ懇親会①)
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至らない所もありましたが、お話して下さった早野先生ならびに参加して下さった参加者と手伝いのボランティアの皆様、お付き合い下さりどうもありがとうございました。

〈参考にしたHP、資料〉
・高エネルギー加速器研究機構(KEK) 加速器の歴史
https://www2.kek.jp/ja/newskek/2003/novdec/kasokuki.html
・高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所 BelleⅡ実験グループ
パンフレット 「BelleⅡ実験 新しい物理法則を探る」



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